ドリームにこそバリューがある 〜 デザインマインド経営考 〜

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イノベーションは【!】  〜 そのつくり方とか、活かし方とか : i.school公開シンポジウムより 〜
JUGEMテーマ:ビジネス
 

先週の週末の土曜日、東京大学i.schoolの公開シンポジウム『イノベーションのメソドロジー?』を聴講してきました。

そのi.schoolシンポジウムは、まず前半に基調講演として、アメリカのZiba Designに籍を置く濱口秀司氏が口火を切り、後半ではスタンフォード大学 d.schoolのMichael Shanks氏が濱口氏の講演に対する課題提起を行ない、紺野登氏(多摩大学大学院教授)と堀井秀之氏(i.schoolエグゼクティブ・ディレクター)を加えた4人でのパネルディスカッションという流れで開催され、半日という短い時間ながらも刺激ある濃い時間を過ごしてきました。


東大のi.school、お手本はスタンフォード大学のd.schoolなのだと思いますが、『人間中心のイノベーション』『クリエイティブ思考のための知の構造化』など5つのフィロソフィーを掲げて、「イノベーション」の学校という位置づけで運営されいます。(i.school公式サイトはこちら)


という訳で、今回のi.schoolセミナーの中でも、濱口氏の講演からのエッセンスと、聴きながら考えたことなどを、少しまとめてみた今回のエントリーです。(走り書きメモを元に書いているので、モレがあるのはご愛敬。明らかに間違っているところは優しくご指摘ください。)



◆イノベーションって?



イノベーションは技術革新と表現されることも多いけれども、元はシュンペーターの新結合なので、技術革新だけを指している訳ではありません。今回のシンポジウムで濱口氏はイノベーションについて次のように述べています。

1)イノベーションを必ず起こせるメソッドは存在しない。
2)イノベーションは定義できない。しかし、イノベーションを理解する(感じる)基準は定義できる。それを彼はプロトコルと表現していました。

メソッドは、例えば『A+B+C→イノベーション』みたいなものです。A・B・Cの要素を合成すれば達成できるというもの。対するプロトコルは、イノベーションと呼ばれるものを俯瞰すると『A・B・Cの要素が共通している』というイメージです。

そのプロトコルによるイノベーションを、『過去の延長にない0.5歩先』、短縮すると 『明日への非連続性』、更に最小限で表現して 『SHIFT』 と表現してみせました。


そして、そのイノベーションの基準としては、次の3点を挙げています。
 1)見たことも聞いたこともない ( なんじゃそれ… !? )
 2)与えられた時間内に実現できる( それは実現できるのか… ?)
 3)議論を生む ( そういうことか…! 【賛成×反対:議論】 )

簡単に表現すると、

!? - ? = !

つまり、1)見たことも聞いたこともないようなアイデアやコンセプトは、2)与えられた時間内に実現可能、ということと一般的には相反するので、ここをクリアしたものが、3)議論を生むような尖ったものとなる、ということをこの式で表しています。

更に加えて、これらの1)〜3)が対象へのインパクトがあるか、をみることによりイノベーションを見分けられるという訳です。


そういえば、『0.5歩分“変わったもの”』という表現は、ワタシ自身デザイナーとしてスタートした昔から、先輩諸氏に言われてきたことだけど、何となくイメージが解るボンヤリとしたものであったのも確かです。

今回のように表現されると解りやすくなります。そしてポイントは、『議論を生む』ということ。更にはその議論の中で組織がどの様に意志決定するのか、ということなのだと思います。

そういう面では、“賢い人”ばかりの集団では、議論を生まないよう合意点、落としどころを探る作用が大きくなりやすいので、イノベーションが生まれ難いという指摘もありました。このことは、確かにこれまでの自分の仕事でも経験があるなぁと思った次第です。



◆イノベーションを起こす為のクセ

イノベーションとしての【!】を生むために意識すべき事は何か?クリエイティビティの一言で済ませてしまうこともできます。そのクリエイティビティは、構造的なことと混沌としたことが、せめぎ合った頂点で最も発揮されるもの、と濱口氏は説明しています。


この頂点を目指すためには、作り手・受け手両者のアタマの中で起きている認識のバイアス(固定概念)の部分を探して、意識的にシフトさせて考えることがコツ。ただこの時に、決して表層的なアイデアをシフトすることを探索してはいけない。一つ一つのアイデアのコアとなる考え方の軸を基に、シフトの方向を探す必要があります。

更には人間の思考はどこかへ偏りがちでもあり、偏在しているともいえるので、単純⇔複雑 抽象⇔具象のマトリクスの中で、思考モードを、絶えず動かして考えること、とも。



そして当然ながら、このような思考ができる人材が複数居る方がイノベーションを起こす力は大きくなります。何故ならば自分のバイアスを自分で潰していくことは、なかなか難しいという面があるから。



◆伝わらなければ意味がない

イノベーションはビジネスの核となるもの。イノベーションを商品やサービスの形へと具体化し、顧客に受け入れられて初めて意味が出てきます。そのために企業側は、もう随分以前から、顧客の不満やニーズ、志向性などをすくい上げ、世の中のトレンドなども考慮して、と顧客を知ろうという努力はしてきています。こうして顧客の『嬉しいこと』を洞察して、商品やサービスの提供を試みる訳ですね。

しかし忘れてはならないのは、その『嬉しいこと』も、顧客側が企業側を『提供するにふさわしい』と感じなければ受け入れてもらえない、ということがあります。

商品やサービスの受け手側である顧客が求めることと、作り手側の企業アイデンティティのマッチングが必要であるということ。『あんた誰?』と顧客が感じているようでは良い関係を持つことはできません。


『自分たちは何者で』『何処からやって来て』『何処を、どうやって目指そうとしているのか』といったことを、顧客に知ってもらい『いいね!』の共感を得るためのブランドマネジメント(ブランディング)活動が欠かせないということ。ブランディングはロゴマークの見えかけを弄ることではありません。

これまで以上に、ブランドマネジメント(ブランディング)への関心を高く持たなければならないのは、それなりにやってきた大企業より、むしろ中小企業かもしれないとも思います。


0.5歩先の未来を創るためのイノベーション、それを自社が提供するに相応しいのか、あるいは“らしさ”があるのか、ということを伝えるためのブランディング、そしてその両者を適切にパッケージして顧客へ届けるためのデザイン、3つの要素共にちゃんと眼を向ける必要があります。

リソースが限られた中小企業が、これら全体を取組むのは難しい面もあるでしょう。でもそれは、以前のエントリでも書いたように、足りないところは外部の力を借りたり、コラボレーションすれば良いだけなのだと思うのですよ。


今回、濱口氏は上手い例えで話しを締めていました。イノベーションを起こすためのクセを付けるのは、自転車の練習と同じようなものだと。

つまり、
 1)行きたい方向を見る
 2)ある程度スピードを出す
 3)2〜3回ころぶ


まずはやり始めること。それが中小企業といえども、市場での独自ポジションを得ることへとつながるのですから。

そして、『イノベーション』『ブランディング』『デザイン』の3分野はワタシ自身のシゴトの領域でもあります。廻りを見回すと、中小企業へのお手伝いができるネットワーク体制も整ってきていました。

世界に名だたる企業を顧客とする Ziba Design や IDEO と比べたら、地味で微力かもしれませんが、“まず最初の一歩”への動きを、身近なところからお手伝いさせていただきます。(笑)

といったことも考えつつ受講してきたi.school、外部からの刺激を受けると自分のアタマの整理だけでなく、一緒に受講した方々とそこからのディスカッションも進み、、と、濃い時間を過ごすことができた良い機会でした。


林田 浩一
( Twitter: http://twitter.com/k_hayashida )


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